蛍が、きれいだったんだ。
僕が最初に好きになったほたる。
大切なことは、君が教えてくれたんだ。
去年の今頃に発売されていた、パープルソフトウェアの18禁ノベルゲーム、『アマツツミ』。
ここ数年新しいえろげに手をつける時間がなかったので、去年からやりたいなーと思っていた本作を、先日プレイし終え。
夏ゲーである。
結論、今の時期にやって本当によかった。
そしてヒロインの1人、ほたるがあまりにも愛おしかったから。
勢いあまって、この数日二次創作SSを書いていました。
このブログも、何も書かない日をなくすためにやることにしたのが正直なところで、文字を書くのをさぼっていたわけではないのです。
そして書きあがったのがこちら。
『かみさまのきまぐれ』
https://touch.pixiv.net/novel/show.php?id=8445231
あっはー、今回ばかりは誰にも読まれないまでありますぜ。
ま、そんなことはどうでもいいのです。書くことまでが目的だから。
えっちいゲームのえっちくないif短編を2本。
以下、ほたるがどうして狂おしく感じるほど魅力的だったか、ゲームやりながら呟いてた内容を見返しながら、適当にまとめておくとしよう。
だっていつかこんな可愛いキャラつくってみたいじゃん。そのためのメモ。
あ、一応。勿論ネタバレMAX盛り。
そもそもほたるには今作で唯一2ルート、結末が2つ用意されていた。
劇中で何人ものほたると出会うことになるが、大別してしまえば生霊状態のほたる、それと自身をオリジナルと称すほたる、こちらもこの2タイプ。そのまま、前者をほたる、後者をオリジナルで進める。
だがどちらも同じ、ほたるなのだ。これだけは先に明言しておく。
僕が最初に好きになったほたる。大切な約束をしてくれた彼女だ。
当たり前のようにほたるは、完全な人間ではない。けれど不完全である自身を認めて、他の不完全な全てに対しても、偏った目線から見たりせず、ありのままを受け入れている(オリジナルのみは、自身の死に纏わるもの一切を受け入れなくなってしまっていたが)。
そしてまだ世界を知らない誠に、そういったことを包み隠さず、自分の言葉で伝えてくれた。僕は惚れた。どうしようもないよね。
オリジナルとは逆に、1週間で消えてゆくほたるたちは、自分の確定した消失を、恐怖しながらも受け入れている。
記憶をなくすヒロインは、よく見る。
生霊を出しちゃうヒロインも、まぁ見る。
今回おもしろかったのは、ほたるがこの合わせ技から生まれていたことだ。
丁寧に張られた伏線で、プレイヤーはほたるが1週間ごとに記憶をなくしていることに、すぐに気がつくことが出来るはずだ。会っているほたるが本体ではないことにも、ある程度えろげ的な物語に触れていれば、珍しいものでもない。
記憶が消えるヒロイン。可哀想である。君は1週間で記憶が消えちゃうフレンズなんだね。そういったヒロインたちは、当然のことながら、どうにかして自身の記憶を次の自身へと引き継ごうとする。キーとなりやすいアイテムは、日記だろうか。
さて今回。ほたるもまた、ほたる自身を継いでゆくことになるのであるが、彼女は1週間ごとに存在そのものが消え、生まれ直すのだ。
ほたるの記憶を、ほたるへ。
それは先ほどの自身の記憶を次の自身へ、と同じように見えて、その本質は別物だ。もはや、自身の記憶を他人に譲渡しているといってしまったほうが近いのかもしれない。
ほたるは消える前に、必要な記憶をオリジナルへと渡すことで、次のほたるがそれを継いだ状態で誕生することになる。
さてここで、消えていくほたるである。
彼女たちは1週間という決められた時間のなかで、その運命を受け入れながらも、それでも自分だけのなにかが欲しいと願う。
己が在ったという、証明。人間誰しもが意識的に、無意識的に、必ず望んでいるエゴだ。
そして、ほたるは恋をした。
わたしが居た意味。あなたと居た意味。
ほたるの、じゃない。
わたしの、なにか。
ほたるは、恋をした自分のことを、オリジナルに多くは語らなくなる。ほたるは自身であるオリジナルの有様を嫌悪しているからだ。もしかしたら、消えるほたるが次のほたると話す時間が与えられていたのなら、ほたるはほたるに、誠とのことを頬を染めながら語ったのかもしれない。
ただそれでも、絶対に話さなかったはずのことが、いくつか思い当たる。大きく二種。
ほたるが『これは絶対にわたしだけの記憶』と意識したもの。
また、ほたるが『これは次のほたるのために言わないでおこう』と、あえて隠したもの。
前者は、先ほど述べた、決して悪いものではない人間のエゴによるものだ。
『2人で忘れる』ことにした初めてのセックスのあと、事情を知らずとも誠に
僕とほたるは、同じだと思うよ。今ここにいる、同じ、ひとつの命だ。
と言ってもらえたほたるは、どれほど嬉しかっただろう。あぁ、今でも涙でそ。
だがほたるの振る舞いは、そういった面だけでは収まらない。彼女が、次に生まれてくるほたるのことをも、思うことができる子だからだ。
次のほたるもまた、少しでも多くの幸せな時間を過ごせますように。
そんな儚い願いを、ほたるはオリジナルではなく、誠へと託す。伝えない、ということによって。“言霊”の存在する設定が皮肉にすら思える。ほたるが次のほたるへの思いを届ける方法は、口を噤むということしかなかったのだ。
猫に餌をやらない、というほたるのエピソードがある。大好きで大好きな猫に、ほたるは餌をやらないのだ。その理由を、対等でいたいから、と彼女は言った。
存在に対する敬意。そして、愛。消えたあとの自分さえ、ほたるのなかには含まれていたのだ。
余談だが、このことについて二次創作を書きながら少し思ったことがある。カタカタキーボードを叩きながら、ほたるのモノローグで「鈴夏ちゃん」と打っていたのだが、これがどうにも違和感が消えない。
鈴夏だけSSのために作った呼称表から抜け落ちてしまっていたため、改めて本編をプレイしてみると、ああ、やはりほたるは鈴夏を「鈴夏さん」と呼んでいた。
これに意味があるのかはわからない。けれどほたるは、外見が自身よりだいぶ下回る彼女にも、敬意を払っていたのだと思う。自身と似た境遇でそこに在る鈴夏に。少なくとも彼女のなかでの敬意を示す基準は、年齢だけでは決してないのだろう。
こうして愛を振りまくほたるが、愛されないはずはない。けれど呪いを吐くほたるでさえ、僕は最初から最後まで愛してしまっていた。
これは正直、意図されていないエラーだろう。
誠とオリジナルとの初めての対面の折、僕は誠のように、オリジナルに対して怒りを覚えることが出来なかった。本来ならあそこで僕自身もキレて、けれど2周目でだんだんと彼女のことを理解しながら、好きになってゆく。そんな流れのはずだ。
どうしてだろう。
だいぶ前からほとんど真相には気づいていたから? 僕自身が最近怒りという感情を忘れているから? 憐れな状況に怒るに怒れないから?
いくつか思い浮かぶのだが、1番これかなというのは、彼女に対して同情ではなく同感してしまったからなのだろう。
僕も多分、自身が避けられないであろう死を目の前にして、生霊を生みだすことしか出来なかったら、その理不尽さに世界を呪うことになるのだろう。……あんま生きる欲求ないから、多分生霊だす出力はさっぱりで、そのままあっさりぽっくり逝くと思うんだけどね。
そもそもオリジナルだって、ほたるなのだ。
ああいつからこの子は本来のほたるの部分を出してくれるのかな。ただただ楽しみで仕方がなかった。愛おしかった。この傲慢なほたるにおちんちんを舐めさせたい。わくわく!
オリジナルのほたるの迎える結末は、当然2つのルートで大きく異なることになる。さて、2つのほたるの話をしたら、2つのルートの話の番だ。手っ取り早く1周目をルート1、2周目で解禁されるほうをルート2で。
ルート1。主人公自己犠牲型ビターエンド。
はい、大好物であります。結婚式まで出来たしね。仮初めの結婚式から死地へと向かう流れ、ゼロの使い魔2期今見ても泣けるんですが。
それはおいといて、残されたほたるんである。蛍の舞う花畑で小さな光を左手の薬指に灯して泣く場面は、やはり1番心を打たれたかもしれない。
少し時間を遡り、結婚式の終わり、誠の“言霊”を受けこの先よくないことが起きることを察したほたるは、焦り必死に引き止めようとする。ここから唯一、ほたるは「誠」と愛しい人の名を呼び捨てる。
夫婦となったからか。余裕がなかったか。理由はどうあれ、あの時彼女の心は、全速力で誠へと駆けていった。だからこそ、最も近くへと他のどのほたるよりも早く到達したのだろう。身体は一歩も動けないのが、本当にもう、皮肉なことだ。
そしてほたるは生きてゆく。けれど1人ではなく、きっと生まれてくる誠の子とともに。主人公は退場しながらも、その先の悲しみ以外にもささやかな幸福もあるはずの未来を感じさせるエンドだ。
対してルート2。いうてみれば完全無欠のハッピーエンド。
誠がオリジナルをほたるだときちんと認めることが出来た先にたどり着ける、別の答えと結末。
こちらでは大好きなほたると大好きなオリジナルが、ひとつになってくれる。実に愛しやすい。わかりやすい幸せも大好き!
ルート1でも2でも、本当にほたるの声優さんには圧倒された。演じ分けられていた2人のほたるが、1つになる。そして、僕らのほたるは残された。今度は誠とともに日々を生きることを許されて。
こうして生まれたほたるが、存在として劇中で最も難解である。どっからどこまでがどのほたるで、オリジナルの部分はどれくらい残っていて、消えていったはずのほたるも混じっているようで。文字通り、すべてのほたるが1つになっている。
さてここまできたところで。
どっちのルートが好きでしょう。
うーん、どっちも!
そうね。じゃあ、
どっちのほたるが好きでしょう。
うーん、どっちも!
選べるかこんなん!
だから、僕は全部のほたるが大好きなんだと!!
何度言えば!!!
プレイし終えて、キレた。
そして、ほたるの幸福を追求するための考察へと飛び込み、誤っているはずの解釈までたどりつくことになるのだ。
全ほたるの幸福。
さてどうすればいいだろう。
どちらが好き嫌いではなく、前提としては当然ルート2で迎えるエンドだ。最も多くのほたるが残っていて、ほたるは大好きな誠さんと過ごせる。
しかし足りない。ルート1の終わりに泣き叫ぶことになるほたるがいない。あの子も幸せじゃなきゃやだ。
そうだ、すべてのほたるが1つになったのなら、あのほたるも一緒になったってことでいいよね。ルート1が、別の世界線だろうが、ありえないはずの未来だろうが、泡沫の夢だっただろうが、そんなの知らないよ。そこにほたるは居たんだもん。ルート1のほたるも、なかったことにはならないんだ。これは譲らないよ!!
以上!!!
これで全ほたるははっぴっぴーになりました。
この勢いのままにほたるSSを書き終えて。
あーほんとに、アマツツミ面白かった。
久しぶりに、こんなに好きになる子に出会えました。
なかなかここまでトリッキーなキャラでメインを張れるのもそうない気がしますが、シナリオの厚みから言っても、堂々としたパッケージヒロインでした。というかあのパッケージで即買いになったよね、結局。
こんなやりとりができるのも、ほたるだけ。
てきとーなことばっかり言っているように見えて、その実言葉を大切にする子は、僕はどうしたって何度だって好きになっちまうんだよ。
来年の夏、またほたるに会いにこよう。
できたら蛍を見にいって、ほたるを想おう。
実際のところ、ルート1のほたるがルート2のほたるのなかにいなかったとしても、瑣末なことなんだ。
やがてまた結婚式を挙げ、純白のドレスを着た君に、きれい 以外の言葉が出るはずはないのだから。
また会う日を楽しみにして。
ボンボヤージュ、ほたる。